ヘッドフォンをスティームパンクに改造する

顔の横にあって目立つヘッドフォンはファッションにも大きく影響を及ぼす存在だが、その割にあまり質感を考慮した製品が見られない……というか、質感にまで気を配るような機種はだいたい高級機でちょっと手が出ない。
ある種のアクセサリと考えれば相応の金額を払うに吝かではないのだけれど、どうにも有線のヘッドフォンというのは断線しやすくて困る。まあ修理できないわけではないしモニター機なんかだとケーブルがソケット式になっていて交換できたりするので、それはそれでアリかとも思いつつ、ひとまず安価な機種に手を加えてどうにかする方向で考えてみた。

どうせなら自分の好みに合わせスチームパンクっぽさを追求する方向で考えよう。
基本的な機種選定についてはスティームパンクなヘッドフォンを見せてください - 妄想科學倶樂部でざっと書いたが、この中でAKGK240をデッドコピーした「Superlux HD681B」という安物があったので、それを改造素体にしてみた。

素体を評価する

特に写真は載せないが、素の状態では「よくできているが安っぽい」という印象である。構造はK240をほぼコピーしており、穴の形状など装飾部分をアレンジしつつ本物が金属部品を使っている部分をすべて樹脂に置き換えている。
ほぼ黒一色にところどころシルバーグレイのリングが使われているのと、右側とヘッドバンド部にメーカーロゴ、左側に型番がライトグレーでプリントされているのが唯一のアクセント。

まずは塗ってみる

多少なりと金属っぽい質感を演出してみようということで、プラモデル用の塗料で塗ってみる。
主に使用したのはタミヤカラーのメタリック系水性塗料。
シルバーグレイだったリング部をゴールドリーフで、歯車のような穴の部分をカッパー、その周囲をブロンズ、外周リングはガンメタルの上からマットブラックを薄く塗っている。ヘッドバンド部分の2本線もガンメタルを適当にドライブラシ。

それなりに良い雰囲気にはなった。日常使いとしてはほぼ充分なんじゃないかと思ったが、スチームパンク小物を目指すためにはもうちょっと機械らしさを加えたくなる。

イメージを書き起こす

上の写真を元に、iPadでちょっと書き込んでみる。こういう「現物への落書き」がすぐにできるのは良いところ。

この時点ではホルン的なイメージでパイプを取り付けるようなことを考えていた。

パイプを物色する

この「ホルンみたいなパイプ」をどうするかが問題であった。
実際に楽器の部品を使うとすると高価になるし、丁度良いスケールのものが入手できるかどうか怪しい。それに金属部品は加工が難しいので、そのまま使うことはできそうにない。
おもちゃの楽器から部品を採る方法もあるが、この手のはだいたい幼児向けでディティールが甘い、というかほとんどない。いい感じのパイプを採取するのは難しそうだ。
自作することも考えた。直径数mmの銅パイプと専用のカッター、およびベンダー(曲げ機)なら数千円で入手は可能だ。ただ、曲げるだけならともかく継ぐには金属のロウ付け加工などが必要になってくる。やはり加工に要求されるレベルが高くなるのであまり手軽ではない。

色々考えた挙句に採用したのが「鉄道模型の情景用配管キット」だった。

2種類の太さを持つパイプが、2種類のアールを持つ90度継手と45度継手で連結できる、スチームパンク化にもってこいの商品である。まあ4mm/5mm径でサイズが合えば、だが。

部品を取り付ける

パイプの部品を切り出しつつ仮組みして取り付ける配管のイメージを作ってゆく。
当初イメージしていたように2本を並列に並べようとすると取り付け部の穴が増えすぎて強度などに心配があったので、2種類のループが合流する方向でプランを改め、また1本は90度向きを変えて側面へ突き出すようにしてみた。
取り付け穴を開けるにはピンバイス、電動ルーター、電動インパクトドライバが重宝した。電動工具万歳。

ウェーブ HGワンタッチピンバイスセット

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マキタ 充電式ペンインパクトドライバ 7.2V 1.0Ah バッテリー搭載 TD021DS

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パイプだけでは機械密度が足りなかったので、前方にエンジンのピストンを取り付けた。これは「大人の科学」のVツイン蒸気エンジンから流用したもの。ところでパイプの接着に模型用のセメントを使ったところぜんぜん固まらなかった。ABS 樹脂ではないものでできているのか。説明書を読んだら「合成ゴム系接着剤で接着してください」などとあったので瞬着で組む方向に切り替える。瞬着が表面の塗膜を溶かし、ぜんぜん瞬着しないが時間をかけたらきっちり接着できた。
エンジンも瞬着で貼り付けたが、流石に強度的に不安があったので穴を貫通させてネジで止めてしまうことにした。こちらにも4mm系のパイプを取り付けて、形状としてはほぼ完成。

塗り足した

後から追加した部品の塗装と、これまで塗っていなかったところの塗装。
エンジン部は元が透明なパーツだったのでマットブラックで下塗りしてからガンメタルでドライブラシ。
パイプは銀色に塗装されているパーツなのでブロンズを粗く塗って汚す。
ペラペラのヘッドバンドは革っぽいテクスチャが付いているのだが、大きくロゴが入っていてどうにも格好悪いので塗り潰すことにした。中央部分にブロンズを重ね塗りして覆い隠す。ついでに縫い目風の溝部分にゴールドリーフでラインを入れてみたらなかなかの雰囲気に。はみ出たところの修正を兼ねてサイドはマットブラックで塗り潰す。

完成


こんな感じである。無意味に突き出したパイプは、熱音響効果的な何らかの技術によって熱差機関からの動力を音に変換する装置である的な設定を。エンジンめいた部品が見える割に可動部分がないが、多分ハウジングの内部にはフライホイールとかが入ってるに違いない。
今後、余裕があったらヘッドバンドの留具部分にリンク構造でも埋め込んだりするかも知れない。