スタイラスペンを黒く染める

iPadに対応するスタイラスペンの中にFifty Threeの「Pencil」という、平たい鉛筆のような形をした製品がある。

磁石内蔵で本体に固定できる木軸型と、磁石なし金属軸型の2種。尖端と後部に導電ゴム部があって静電容量型タッチパネルに反応するだけでなく、Bluetooth接続により内部センサーでの筆圧検出ができるため(対応アプリなら)濃さ/太さ調節や、2つの導電部を別機能に割り当てられる(通常は描画と消去)など「筆記用具らしい使い心地」が実現できる。

木軸と金属軸、どちらも格好良いのだが、どうせならと磁石内蔵の木軸の方を購入した。
公式サイトでは割合暗めのブラウンに見えるが、実際に届いたものはもう少し明るくて、私の印象からするとこれぐらいに見える。まあ何しろ材質が木だから、この辺はロットによるばらつきがあるだけなのかも知れないが、もっと暗めの方が好みなので、塗装することにした。
できれば金属軸に迫る暗褐色、チョコレートブラウンぐらいの感じにしたい。

木を塗装するには色々方法があるが、なるべくなら製品本来の質感は損ないたくない。木目を消してしまうような塗装は除外する。またPencilの軸は表面に光沢めいた塗膜加工がなく、さらりとした手触りだ。それを残すために、ニス類も使わない。

というわけで最初に探したのはオイルステインである。これは着色には都合が良いが、水性のものはニスなどで仕上げる前提で作られているので油性のものを探す:しかしどういうわけか、油性で深い色の製品が見当たらない。
検索しては色見本などを見比べつつ、最終的に選んだのがワトコのエボニーだった。

エボニーとは黒檀のことで、この塗料も布などに含ませるとほぼ真っ黒に近い焦げ茶色に見える。塗料成分を含んだオイルが内部まで浸含するので表面だけでなく奥の方にまで色が付き、傷などによる剥げを生じ難いようだ。

ティッシュに含ませてゴムを外した軸全体に摺り込んでは乾いたティッシュで磨く。確かに色は付くのだが、拭き取ってしまうので思ったより色が浅い。何度か繰り返すうちに、公式の色ぐらいには暗い色になってきた。しかし私としては、もっと暗い色を目指したい。

もっとはっきり着色できるものはないか、と布や革・木材などにしっかり着色できるという「染めQ」を吹いてみた。

たしかに暗めの茶色に塗装できる。が、「微細な凹凸に入り込む微粒子塗料」とはいっても表面着色ではあるし、残念ながらワトコのオイルと相性が悪く、溶けて拭い取られてしまう。表面塗装には良いが浸含着色向きではない。それでも多少は色が残るのか、吹く前よりはチョコレートっぽい赤身の乗った茶色に見える。

墨も使ってみた。これもティッシュに含ませては軸に刷り込み、乾いたところを磨く。
表面は覿面に真っ黒になるが、ワトコほどには染み込まないので擦ると落ちてしまう。ただ、色味はちょっと黒ずんできて、これはこれで良い感じ。

なるべく染み易くなるよう、表面に#600の紙やすりを当ててはワトコオイルと墨を交互に刷り込むこと1週間ほど、ようやくチョコレートブラウンと言える暗褐色の軸が完成した。